[TOKYO]存在を超えて/Beyond Existence

谷中のWALLS TOKYOにて、版画家の中村真理さんと二人展を行います。


中村真理 村上郁「存在を超えて」
Nakamura Mari, Murakami Kaoru ‘Beyond Existence’

2024.4.18 thu – 5.5 sun
12:00 – 19:00
open / 水・木・金・土・日 wed-sun
closed / 月・火 mon, tue
※この展示期間中は日曜日もOPENします

WALLS TOKYO
東京都台東区谷中6-2-41
03-6455-3559

東京メトロ千代田線/根津駅から:徒歩9分
各線/日暮里駅から:徒歩9分
JR山手線/鶯谷駅から:徒歩12分
各線/上野駅から:徒歩15分


記憶/忘却 

 『ブレードランナー』(*)というSF映画がある。「レプリカント」と呼ばれる人間そっくりのアンドロイドが労働用ロボットとして開発され、流通している未来。レプリカントたちは、人間以上の能力が装備されていて、製造後数年で感情も生じてくる。そんな彼らは、安全装置として寿命が4年に設定されている。人間に対し反乱を起こすようなことがあれば深刻な事態になると予想されるからだ。

 レプリカントは過去を持たないがゆえに感情が目覚めると情緒不安定になり始める。最新型の試作品として作られた「レイチェル」は、アンドロイド設計者の姪の記憶を移植され、自分はレプリカントではないという証拠として子供の頃の写真(姪の子供の頃の写真)を大切にしている。

 宇宙コロニーで労働に従事していた同型のレプリカント6人は、自らの寿命が4年しかないことを知り、寿命を延ばすよう製造元に迫るため、反乱を起こし地球に戻ってくる。レイチェル同様に彼らも写真にこだわる。所有する写真の中に少年が写っているモノクロームの古い写真が混ざっているのは、彼らには全く関係のない写真さえ手放さないということだ。これらの写真は彼らの持ち得ない幼い頃の記憶を作り出す糸口となるのだろう。

 港千尋は、古代ギリシア社会のムネモン(mnemon[1])についてこう説明する。ムネモンは正義の名のもとに契約の履行や支払いなどを記録する人々であるというのだが、「このムネモンは神話のなかでは英雄に付添い、絶えず過去の出来事を語りながら彼の記憶を助ける。というのも忘却はすなわち死を意味するからである。」(**)

 死を恐れるレプリカントたちは、絶えず写真に写し撮られた過去を参照しながら自分は何者であるのかを確認する。その拠り所となっている写真は自分の写真ではなく、どこかの誰かの「私」の引用だ。それでも彼らは自らが存在した/しているという証拠に固執する。忘却という死を遠ざけ、自我のある人間として生きるために。

 そこから見えてくるのは、過去と未来を持ち得るのは、主体として自身を意識する能力−自我−を持つ人間だけだということだ。生身の人間と人工知能を比較すればより明白になるだろう。ひたすら情報を統合し生成するAIは過去も未来も持つことはない。

 自我を持つ存在のみが使う一人称「私」。ここでいう「私」は、人間を意味する抽象的な「私」である。その「私」の存在を証明するものは何か。「私」がいなくなったとき、「私」が存在したという証明は行い得るのだろうか。それにはおそらく記憶の女神の助けが必要だ。過去を顧みて未来を夢想する「私」の記憶は、物質の姿を借りてそこここに存在してはいないだろうか。

 今、ここで二人の作家を紹介したい。

 村上郁(むらかみ・かおる)は、事実とされるものも認識よって変容することを基盤とし、事実と認識のズレ、勘違い、思い込み、意味の多様性、翻訳の不可能性などに着想を得て制作をしている。近年では、その場所に残された物を素材にして、人の存在と消えゆく歴史・文化、事象を読み解き、新たな物語を紡ぐインスタレーション作品を多く発表。蚤の市で手に入れたポストカードや写真、廃業した店舗に残された当時の遺物などを扱った作品がある。

 中村真理(なかむら・まり)は、使用されたノートやスケジュール帳をページ毎に版にして一枚の紙に刷るという作品を発表。複数のページが一枚の紙に刷られるため、書かれた文字は時に重なり合い、時にずれ、本来の役割を離れて抽象化されている。それは、可視化された時間の重なり合いであり、今は目的を失ってしまった記憶の痕跡である。

 役目を終えた記憶の残滓からは、僅かながらも人の存在−生きて何かを考え、感じ、未来を見ていた人−を感じることができる。「私」の抜け殻であるからこそ、その不在がかえって存在を強く感じさせる。美術家たちによって見出された人間の生きた証は、まるで忘却に対する最後の抵抗を見せるかのように静かに輝きだすのだ。

(*)リドリー・スコット監督 『ブレードランナー』 ハリソン・フォード, ルドガー・ハウアー,ショーン・ヤング 1982年

(**)港千尋 『記憶 「想像」と「想起」の力』 講談社 1996年  p.173

[1] mnemon(ニーモン)とは、古代ギリシア社会で記録係の職にあった人のこと。人の記憶の一単位。記憶術(Mnemonic)の語源。ギリシア神話の記憶の女神であるムネモシュネに由来する。

[GARD] Still Life

フランス・ガル県のChartreuse de Villeneuve lez Avignonにて、レジデンシー・スペースÉchangeur22と協同で開催している展示Still Lifeにスクリーンプリント作品の新作を出品しています。

今年の9月からサンローラン・ド・アルブルで開催された国際交流・巡回レジデンス「MOBILITY#2」の一環として、Ludovic Landolt、Letícia Lampert、 Jai Jang、Seunghwa Choi、Sun Kimと共に、アヴィニョンの元修道院の独房空間を使用して展示を行っています。


展覧会期|2021年10月16日(土)~12月31日(金)
開館時間|12:00~19:00(金・土は20:00まで)
会  場|Chartreuse de Villeneuve lez Avignon(map

公式サイト|https://chartreuse.org/site/mobility2

参加作家|Ludovic Landolt、Letícia Lampert、 Murakami Kaoru、 Jai Jang,、Seunghwa Choi、Sun Kim

[GUNMA]中之条ビエンナーレ2021/Nakanojo Biennale 2021

中之条ビエンナーレに出品いたします。
会場は伊参エリア・旧神保家住宅になります。


展覧会期|2021年9月13日(月)-10月13日(水)の31日間 無休
     ※開催基準が満たされ次第の開催になります。詳細は公式ウェブサイトをご覧ください。
開館時間|9:30~17:00
会  場|群馬県中之条町 町内各所
観 覧 料|当日1500円 / 高校生以下 鑑賞無料

公式サイト|https://nakanojo-biennale.com


公式ショップにて、アクセサリーの販売も行います。
また9月11日〜10月11日まで、アーツ前橋の中之条ビエンナーレ・ポップアップショップでも販売いたします。

[TOKYO]LOOP HOLE15周年記念 「チッチャイーノ展」/LOOP HOLE 15th Anniversary ‘Small-ish Show’

府中のLOOP HOLEにて、15周年記念展《後半》に参加させて頂きます。


展覧会期|《前半》2020年11月7日[土]—28日[土]
《後半》2020年12月5日[土]—26日[土]
開館時間|木・金・土 14.00 – 18.00
会  場|LOOP HOLE
観 覧 料|無料

公式サイト|http://studioloophole.com

参加作家|
《前半》秋山幸 飯田Jennifer桃子 石井トミイ 稲川江梨 今井俊介 今井貴広 今村仁 大久保あり 大槻英世 岡野智史 鹿野震一郎 木村俊幸 小林史子 ジャンボスズキ 杉山都葵 高橋大輔 塙将良 原汐莉 水上愛美 光藤雄介 宮崎勇次郎 村上綾 森田浩彰 森野大地

《後半》池崎拓也 石川遼 EKKO 榎倉冴香 OJUN 小川泰 小野冬黄 小山維子 木下令子 木村有紗 木村俊幸 小嶋基弘 齋藤雄介 佐藤克久 佐藤平馬 佐藤万絵子 清水勇気 五月女哲平 多田佳那子 棰石憲蔵 中園孔二 なしの hanage 藤原優子 益永梢子 松田修 水戸部七絵 宮本穂曇 村上郁 山瀬まゆみ 横田章 和田みつひと

[TOKUSHIMA]KAIR2019作品展覧会/KAIR2019 Exhibition

9月から2ヶ月ほど滞在した徳島県神山町のレジデンスの成果展が行われます。

 

 


展覧会期|2019年10月27日(日)~11月4日(月・振替休日)、11月9日(土)〜10日(日)
開館時間|土日10:00~17:00、平日13:00~17:00(11/4は16時に閉館します)
会  場|町内各所:劇場寄井座、名西酒造酒蔵、大粟山、豆ちよ焙煎所、他
観 覧 料|無料

 

 

 

公式サイト|イン神山

参加作家|Linus Riepler、狩野哲郎、村上郁

オープニング・ツアー|10月27日(金)10:00〜 改善センター前に集合


この作品は、中学校でのワークショップで作られたパペット人形と音声、廃材の障子による影絵と、3Dプリンタで出力された木偶人形の頭を借りた町の人の語りの映像によって構成されています。

感覚と興味に従って滞在中に集められた素材(障子、住人の語り、音に変換された言葉、複製された白い木偶人形、指向性スピーカー、パペットの影とその台詞)は、収集されるなかで、人の不在を想起させるものという共通項を帯び始めました。それらをプロキオニデスという実在する動物の存在で結びつけることによって見えてくる、観念的な神山町の昔・今・未来を、鑑賞者の想像力の中で浮かび上がらせる試みです。

[GUNMA]個展 光のひとつ/Hikarinohitostu

高崎のビエントアーツギャラリーにて、個展を開催いたします。

 

 


展覧会期|2019年7月19日(金)~8月26日(月)
開館時間|金・土・日・月曜 12:00-18:00(火・水・木曜定休)
会  場|VIENTO ARTS GALLERY(map) 〒370-0006 群馬県高崎市問屋町2丁目7(ビエント高崎1F西側)
休 館 日|火・水・木曜
観 覧 料|無料

 

 

公式サイト|https://www.vientoarts.com

トーク、オープニングパーティ|7月20日(土)16:00〜

Dama Dam Talによるパフォーマンス|8月17日(日)17:00〜


展示ステートメント

記憶や生命を直感的に連想させる要素として光を扱ってきたが、人為的に作られた照明の光は、コードを逆さまにたどった先にあるふたつの大きなイメージとも結びつく。ひとつめは、点けたり消したりできる無数の個人的な光の広がり。ふたつめは、NASAの衛星が夜の側の地球を撮影して作り出した世界地図が示唆するもの。この光の地図が露わにするのは、都市とその周縁であり、人間の経済活動のネットワークとその光の規模である。これらの異なる視点から見た、異なる意味合いの光は、どちらも異なるスケールで抽象的だ。そして、実在しながらも直接目にすることはできない。

ここ近年はこれらの見えない光をどのように「ほのめかす」かについて探ってきたように思う。このほのめかしに興味を惹かれるのは、光が抱えこむ引き裂かれた世界観が、分断と繋がりへの模索を思わせるからである。あかりは、今の時代の経済や社会、自然や生命観を映す鏡のようなものだと思う。

[CHINA]対流風景:日中現代美術レジデンシー/Convective Scenery : China – Japan Contemporary Art Residency

中国・広州の53美術館が主催するレジデンスおよび成果展に参加させていただくことになりました。


展覧会期|2018年12月8日~2019年1月7日
会  場|53 Art Museum China(map) 住所 No.19 Huiyuan Street, Huijing Road, Guangyuan Express Road, GZ

オープニングパーティ|12月8日(金)

公式サイト|53 Art Museum China

参加作家|渡邊智子 Tomoko Watanabe
村上 郁 Kaoru Murakami
富樫智子 Satoko Togashi
山田 悠 Haruka Yamada
西岳拡貴 Hiroki Nishitake
東城信之介 Shinnosuke Tojo
山重徹夫 Tetsuo Yamashige
本郷芳哉 Yoshiya Hongo
特別招待アーティスト:
江上 弘 Hiroshi Egami (日本)
Mireya Samper (アイスランド)
王泽 Ze WANG
陈庆 Qing CHEN
何利校 Lixiao HE
吴杰仁 Jieren WU
谢子耿 Zigeng XIE
施i维娜 Weina SHI

キュレーター|山重徹夫、肖麗、李琼波 (53美術館館長)
主  催|53 Art Museum China
共  催|広州日本総領事館


私たちが日常的に使う言葉や建築物や衣服など、日本には古代中国から流れてきたものが多くある。日本人は中国から渡ってきた文化を、自分たちの使いやすいように変化させ定着させていった。その代表的な例が、中国から伝わったお茶と、日本独自の畳文化を融合させて「茶道」。他にも子供の成長を願う「鯉のぼり」は『後漢書』李膺伝に語られた故事に由来している。現代の中国にも多くも日本の技術が土台となっている産業や、ゲームやアニメといった娯楽文化が存在する。このことは中国と日本は古代より大きな流れの中で、文化が常に対流している関係ということが言える。私たちが見ている風景は互いに繋がりを持ちながらも、異なる文化の土台の上で独自に変化を続けている。
本企画展「対流風景」は広州と中之条を自由に行き来する風となり、今後も双方の芸術文化の追い風となることを願います。
山重徹夫

[TOKYO]オル★テラ3/ALT★TERA3

六本木の妙善寺にて行われるオル★テラ3に参加いたします。
2日間だけの短い展示ですが、ぜひお立ち寄りください。


展覧会期|2018年9月29日(土)~30日(日)
開館時間|1日目:13:00~21:00
     2日目:13:00~20:00
会  場|妙善寺

東京都港区西麻布3-2-13
(六本木ヒルズ/ホテルグランドハイアット東京前)
東京メトロ日比谷線・大江戸線
六本木駅 徒歩8分
東京メトロ南北線
麻布十番駅 徒歩10分

観 覧 料|無料

公式サイト|ウェブサイト

オープニングパーティ|9月29日(金)18:00〜


妙善寺は江戸時代より行われていた、お祭りの楽しさや高揚感、過去に見られていた見世物小屋の不思議さ、葬儀などの死との関わり。それら統一されていないモノが集まり発信されていく場所であり、人々に様々のモノを見せてきた場所でもありました。
本展は2016年から始まり、今年で三回目の開催になります。並べられている作品には共有のテーマや、規格や統一もありません。ここは、縁日の見世のように、アーティストが思い思いにアート作品をひろげています。それは、お寺に集まって来たバラバラなモノ達に似ています。価値の問い、死生観の認識、事のあり方を表したりと、色々あります。
縁日の出店のように並べられた作品達は、美術館やギャラリー空間などでは見る事がない展示風景になり、私たちに何を見せてくれるのでしょうか。  二日間限りに行われる展覧会を是非ご高覧ください。

Scroll to top